「空間ID」は、現実世界を3次元の仮想の箱に区切ってIDを割り振り、
特定の場所や地物情報を一意に識別するためのもので、国が進める
新しいデータ規格です。
・参考記事:3次元空間情報基盤アーキテクチャ設計 報告書(デジタル庁) https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/9f4e70e2-2335-4181-8293-258c12549d31/df4f46e8/20220927_policies_mobility_report_03.pdf
このIDは、3次元の空間を「ボクセル」として直方格子状に分割し、
それぞれに地理的な座標や情報を関連付けています。
これにより、2次元の地理情報だけでなく、3次元の情報も
識別できるようになります。
「空間ID」が注目される背景には、 ドローンの普及や
3次元地理情報の需要の増加などがあります。
ロボットやドローン社会においても、
空間IDの活用は避けては通れない道となっていて、
例えば、空間IDを使用することで、ロボットの移動マップや
建物のフロア図といった空間情報の連携が可能となり、
より効率的な運用が期待されています。
また、日本では人口減少が進み、それにより様々な業界で
働き手が減少し人手不足に直面していることも関連しています。
その中で、これまで市民生活を支えてきた社会基盤を維持するには、
現実世界にデジタル技術を導入し人手に頼らないサービスを
広げていくことが不可欠です。
例えば、ロボットやドローンを自律移動させたい場合、
位置情報や現実世界の建物・樹木の情報などを取得して
地図を作製し事前にルートを設定しておく必要があります。
この際、地図の仕様・規格が事業者によって異なるため、
別の事業者がロボットなどを導入する場合、 同じエリアや
ルートを走行する場合でも新たに地図を作製したり位置情報を
登録したりしなければなりません。
このように、空間属性情報の仕様・規格が異なると、
コストも工数もかかり、活用・普及が十分に進まない
恐れがあります。
そうした課題を解決するため、
異なる基準に基づいた空間情報であっても
一意に位置を特定できる空間IDを検索キー(インデックス)
として導入する取り組みが始まっています。
その実現に向け、様々な空間情報(時間情報含む)を
高速に処理するための技術開発や標準化に国内企業が
取り組んでいます。
高精度3次元データを手掛けるダイナミックマッププラットフォーム
とソフトバンクなどが2023年2月、 「空間ID」を活用して
自律走行ロボットや拡張現実(AR)ナビゲーションに
建物内の情報などを共有する実証実験を共同で実施しています。
ソフトバンクは実験の結果、
これまで自律走行ロボット用の地図の作製にかかっていた工数を
最大8割程度削減できるとしました。
有識者は
「空間IDという全く新しい考え方が、
いかに標準として普及して使ってもらえるかという点にあり、
空間IDの価値は、どれだけ情報が空間IDにひも付けられるか
という点になるだろう。 どれだけ(空間IDの枠組みを利用する)
ユーザー企業を増やせるかに注力することが重要だ」
としています。
今後は、例えばドローンなどで、
複数の事業者が同じエリア内で事業展開している場合、
「空間ID」をインデックスとして、空間IDにひも付いた
空間属性情報を、 参照・更新するためのAPI
(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を
いかに共通化していくかといったルール形成が必要になってきます。