このメルマガでも何度か取り上げていますが、
多くの地域で問題化している空き家。
各地自治体では空き家バンクなどを設置して、
さまざまな取組みが行われてはいますが、
どこも苦戦しているように見受けられます。
その一方で、若い人たちの間では
「安く借りられる空き家があったらこんなことができるのに、
なかなか見つけられない」
という声もあがっているようです。
空き家、空きスペースに特化した
“不動産を借りたい人向け”情報サービス
「さかさま不動産」は、そんな問題を解決するサービス。
2023年6月には、「さかさま不動産」の10ヶ所目の支局となる、
やまなし支局が開局し、2020年のサービススタート以降拠点を
増やしています。
「さかさま不動産」は、簡単にいうと、
借りたい“人”の情報が並ぶサイトで、
貸したい“物件“が並んでいる従来のスタイルとは真逆の、
まさに“さかさま”なサービス。
「借主の想いがレア物件を動かす不動産サイト」
という位置づけで、クラウドファンディングで約500万円の
資金調達を成立させスタートしました。
不動産と銘打ってはいますが、掲載されているのは、
「古民家純喫茶をやりたい」、
「高齢者スタッフが活躍する食堂をやりたい」、
「生きるを学べる保育園をつくる!」
など、借りたい人の想い。
そんな人たちの”夢”を”応援”したい貸主を募集する形式で、
「この人に貸したい」「夢を応援したい」と思う人がいれば、
大家さん側からオファーをするというのが「さかさま不動産」の
サービスの仕組みとなっています。
従来の賃貸の仕組みは、
借りたい人が不動産仲介会社などを介して物件を紹介してもらう仕組み。
しかし、空き家は資産価値が低く、仲介会社が利益を出しにくい
という理由から、そもそも市場に出てくることが少ない傾向がありました。
大家さん、空き家を借りたい人、双方の想いを叶え、
人と物件をつなぐアイデアとして考え出されたのが
「さかさま不動産」です。
▼参考記事
https://www.homes.co.jp/cont/press/reform/reform_00957/
「さかさま不動産」でマッチングした21件のうち、
20件が事業を継続しているそう。
開業から1年での廃業率が約40%ともいわれるなかで継続率が高いのは、
大家さんをはじめ地域とつながりをもった状態からスタートできる
という仕組みにあります。
自分で選んだ場所に自分1人で行っていたら、つながりが無いなかで進める
必要がありますが、 「さかさま不動産」の場合、大家さん側が
ここでやってほしいとオファーするため、 大家さんが常連になったり
知り合いを紹介してくれたりと、単に物件の貸し借りだけの関係ではない
つながりが生まれます。
国土交通省の「空き地等に関する所有者アンケート結果」によると、
情報を提供してもいいと答える大家はわずか15.6%。
34.4%の人にいたっては情報提供は一切行わないと答えている 一方で、
条件によっては物件を貸してもいいという人は全体の45.8%と
半数近く存在しています。
「移住希望者はいるのに貸せる空き家がない」というのが
各地に共通した悩みで、空き家はたくさんあるのに
“貸せる空き家がない”状態。
その理由は、大家が物件情報を開示したがらない点にあります。
こういった情報公開と賃貸の意思とのギャップが、潜在的な空き家を
流通させるカギ。
「空き家の情報を公開しなくても借り手を紹介してくれるサービスがあれば
問合せは増えるはず」というのが「さかさま不動産」のスタンスで、
大家さん側のニーズにアプローチできるサービスだからこそ、
注目を集めているといえます。
「さかさま不動産」画期的な仕組みは、
国土交通省の「まちづくりアワード2022」の特別賞も受賞。
受賞をきっかけに2022年8月には三重県桑名市と
「挑戦を応援できるまちづくり」に関する連携協定を結びました。
人口減少が進む桑名市にチャレンジ精神をもつ人を誘致しよう
という目的で、市の広報誌に「さかさま不動産」の情報を掲載し、
借り手の想いも掲載しています。
また、全国イノベーション推進機関ネットワーク事務局が主催する
「イノベーションネットアワード2023」と、
「日経ソーシャルビジネスコンテスト」においても
優秀賞を受賞。
ユニークでクリエイティブな発想が次々と評価されました。
受賞により「さかさま不動産」の認知度は上がっている。
そんな中、増え続ける空き家に対し、今後は全国の支局をつないだ
ネットワークを作ろうという構想があるそう。
借りたい人の中には、場所を限定していない人もおり、
自分が想像もしていなかったようなところからオファーがくるので
可能性が広がるため、 最適な場所に最適な人を呼び込むシステムを
目論んでいるそうです。
新たな挑戦者が動くことで、地方都市が活性化し、
空き家問題の解決の糸口となるといいですね。