建設業界は、労働力不足という深刻な課題に
直面しています。
総務省の労働力調査によると、
2023年の就業者数は483万人と
1997年のピーク時に比べて約3割減少しました。
リクルートワークス研究所は、2040年には
労働力の不足が65万7000人に達すると
予測しています。
このような背景の中、働き方改革関連法による
時間外労働の上限規制が適用されるなど、
作業効率の改善が喫緊の課題となっています。
この課題に対して、
AIやデジタル技術を活用した建設現場の
業務効率化サービスが注目を集めています。
特に、施工管理アプリを開発する
株式会社アンドパッドのような企業は、
AIを駆使して鉄筋の配置記録を従来の
6倍の速さで作成できる技術を開発し、
建設業界における省力化や省人化の実現を
支えています。
アンドパッドが着目したのは、
「電子黒板」と呼ばれる、鉄筋の配置や種類を
クラウド上に記録するシステムです。
これは、
設計図通りに施工されたことを証明するために
必要なもので、現場写真とともに保存されます。
大型のビルやマンションの現場では、
1万枚を超える電子黒板を作成することも
珍しくありません。
従来の施工管理アプリでは、AIが設計図を分析し、
電子黒板が必要な重要部分を抽出する機能を
備えていましたが、鉄筋の種類などの情報を
組み合わせる作業は手作業で行う必要がありました。
アンドパッドが開発した新機能では、
この一連の作業を自動化し、
電子黒板の作成段階までAIが担います。
担当者は関連ファイルと現場写真を
アップロードするだけで済むため、
作業時間を従来の6分の1に短縮することが
可能になりました。
これにより、
「報告書などの作成」を減らしたいと回答した
建設従事者のニーズに応える形となっています。
・株式会社アンドパッド
https://andpad.co.jp/
しかし、
建設業界全体の労働力不足という大きな課題に対して、
アンドパッドの取り組みはほんの一例に過ぎません。
大手ゼネコンでは
デジタル技術やロボットの活用が進んでいますが
資金や専門人材が不足している中小企業では、
有効な解決策を見つけることが困難な状況です。
そこで、株式会社アルダグラムのように、
比較的安価で導入が容易なスタートアップの
サービスが注目を集めています。
株式会社アルダグラムは、
オフライン環境でも入力できる作業管理アプリを
提供し、オンライン環境に戻った際には自動で
クラウドと同期してデータを移す新機能を追加しました。
・株式会社アルダグラム
https://aldagram.com/
さらに、
建設機械の管理を効率化するサービスを開発した
株式会社Arch(アーチ)は、建機に取り付けた
QRコードをスマートフォンで読み取り、異なる
点検項目を入力するシステムを導入しました。
これにより、
印刷した書類に現場で記入し、事務所の現場監督に提出する
手間が省けるようになり、現場監督も点検状況を瞬時に
把握できるようになりました。
・株式会社Arch(アーチ)
https://arch-dx.co.jp/
国内の建設投資は、
23年度に22年度比2%増の70兆3200億円と
9年連続で拡大する見通しです。
このような右肩上がりの建設需要と、
深刻化する人手不足のギャップを埋めるためには、
スタートアップが開発する先端技術への期待が
高まっています。
建設業界における労働力不足という課題は、
単に人を増やすだけでは解決できません。
AIやデジタル技術の活用は、
業務の効率化と作業負担の軽減を実現し、
建設業界の持続可能な発展に貢献しています。
これらの技術は、
業務プロセスを根本から変える可能性を持ち、
建設業界だけでなく、関連する不動産業界においても
新たな価値を生み出しています。
未来を見据え、
これらの革新的な技術を積極的に取り入れ、
活用していくことが、業界全体の成長と発展への
鍵となるでしょう。