前回のメルマガで「Z世代」
(1990年後半から2000年代に生まれた人を指す言葉)
についての話題を取り上げましたが、 住宅業界でも、
定住や持ち家にこだわらないZ世代を中心とした新しい住宅観に、
住宅テック(住宅×テクノロジー)のスタートアップ企業が
応えているようです。
セレンディクス(兵庫県西宮市)は、
「マイカーと同じように、マイホームを買い替えられる時代をつくる」
をモットーに、 3Dプリンターを使った球体住宅「スフィア」を試作し、
2022年1月にまずは企業向けに、同年夏をメドに個人向けにも
販売する計画です。
スフィアは、建築基準法の対象にあたらない
床面積10平方メートル以下のサイズを想定し、
コンクリートなどを原材料として外壁や床を形成しています。
耐震性を担保するために、富士山レーダーなどでも導入された
「ジオデシック・ドーム」と呼ばれる球体構造を参考に開発されました。
電気設備は人力で施工するが、作業は計3日間で完了するとのことで、
人件費や建材の物流費を減らし、同サイズであれば300万円程度から
建てられるようです。
※設置する際は別途、土地の購入が必要
3Dプリンター住宅は欧米で実用化されていますが、
国内で販売するのはスフィアが初めての事例になるそうです。
建設や販売は、住宅メーカーや建設会社など
約40社で構成するコンソーシアムが共同で担い、
現在、別荘などの収益物件として購入を希望する企業は約40社に達し、
個人の購入希望者も100人を超えるとのことです。
東京都内の賃貸マンションの平均賃料は2010年に比べ
1.2倍に上昇したそうで、 新型コロナウイルス禍で生活の安定感が低下し、
住宅を買う覚悟を持つのはより難しくなったため、
「共有」の消費スタイルが広がり、マイホームへのこだわりが薄い
若者も少なくないという現状となっています。
こうした変化を新興勢は商機とみており、
「恋人の家や実家などで1カ月に10日間ほど外泊する若者は多い」
と考えるユニット(東京都千代田区)は、 住人が外泊する場合、
72時間前までに申請すれば家賃を減額するサービスを手掛けています。
月額家賃から基本料金を引き、その残りから日割りで減らす方式で、
外泊中の部屋は貸し出し、宿泊者がいた場合は家主の収入となります。
サービス開始から1年半で、月間利用者数は直営物件以外も含めて
300人を超えました。
この仕組みの直営物件を近く東京都大田区と横浜市で開設し、
すでに運営している東京都渋谷区や千代田区などの物件を合わせ、
部屋数を1割増の100室に増やす予定で、 2025年7月までには2500室へ
拡大する目標を立てています。
また、信用保証面でも新たな需要を反映したサービスが広がってきています。
フリーランス人材に不動産賃貸の与信サービスを提供する
リース(東京・新宿)は家賃保証会社向けに、
フリーランスの仕事の受注状況や年収、年齢などを基に
人工知能(AI)が信用力を自動的に評価するソフトを開発しました。
リースの与信サービスは20~30代の利用が多く、
エンジニアやクリエーターなどを中心に1万人を超えました。
蓄積したノウハウを、
フリーランスに対する与信に不慣れな家賃保証会社に活用してもらい、
市場拡大につなげる狙いとのことです。
対面や現金を重視するなど古い商習慣も残る不動産業界ですが、
実際のニーズとの乖離(かいり)を埋める動きは行政でも進んでおり、
国土交通省は3月、以前は対面を義務付けていた不動産売買取引での
重要事項の説明を、ビデオ通話で代替できるようにしました。
国内の不動産テックの市場規模は2025年度に1兆2461億円と、
2020年度の約2倍に拡大する見通しで、
10ヶ月で50社以上増えている状況ですが、
海外は国内の6倍ものサービスがあり、まだまだこれから
伸びる業界であるといえます。
現状の不動産業界に満足できないZ世代に応える
スタートアップの新サービスが続々と生まれそうな予感で、
多くの新規参入が見込まれますので、目が離せないですね。