世界の主要国で高騰する住宅価格の行方に注目が集まっていますが、
日本国内の、住宅価格の状況は海外と異なっており、
コロナ禍を経た価格上昇率は1%程度で欧米を大幅に下回っています。
首都圏などのマンションは高騰していますが、
相対的に安い日本の不動産は海外投資家の標的になります。
最近も外資系ファンドによる西武ホールディングスのホテル買収
といった動きが出ています。
世界の主要国で住宅価格が高騰しているのは、
新型コロナウイルス禍での緩和緩和がもたらした状況が
米連邦準備理事会(FRB)などの金融引き締めで
転機を迎える可能性があるためです。
世界の家計債務(注1)が55兆ドルと過去最高に積みあがる中、
各国は住宅市場の先行きに神経をとがらせています。
主要25カ国の住宅価格はコロナ後に急上昇し、
2021年7~9月は前年同期比13%高まで上昇。
22カ国では住宅価格の上昇率が可処分所得の上昇率より大きく、
住宅ローン残高が膨らみ、世界の家計債務は21年9月で55.4兆ドルと
コロナ前より約6兆ドル増加しています。
過去に住宅過熱で経済が打撃を受けた代表例はリーマンショック。
ITバブル崩壊後、
00年代前半の金融緩和で政策金利が6%台から1%台に下がり、
返済が滞るリスクを軽視してサブプライムと呼ぶ信用力の低い
個人への融資が横行しました。
ローンを複雑に束ねた証券化商品も乱造され、
2004年から利上げ局面に転じると、 2007~08年には住宅価格が急落し
関連商品の投げ売りで金融機関は巨額損失を計上しました。
今回は当時と状況が異なり、
世界の金融当局は当時の反省から規制を強化し、
金融機関はリスクを取り過ぎない経営にシフトしました。
証券化商品の残高は2007~08年より大幅に少なく
金融システム不安につながる恐れも小さいといえます。
とはいえ、
低金利下でローンを膨らませた人が金利上昇局面で
打撃を被る懸念は大きく、 FRBは3月から利上げを開始する見通しで、
米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)によると、
30年物固定金利は1月に3.55%と1カ月で0.5%上がったそうです。
金利上昇は住宅需要を冷やす恐れがあります。
米住宅投資の伸び率が21年の前年比9%から22年は1%程度に減速する
とみられ、 住宅過熱の調整リスクに世界が神経をとがらせている状況です。
日本でも住宅ローン残高が増えています。
日銀の資金循環統計によると家計債務は2021年9月で346兆円と
2年前より4%増え、 特に住宅ローンが216兆円と同5%増えました。
コロナ下で住環境を見直そうとする需要が大きいといえます。
割安だと感じる海外投資家からの資金流入が続く可能性がある一方で、
海外で不動産価格が調整すれば日本への投資が細るシナリオもありえるため、
アフターコロナに向け多角的にリスクに目を光らせる必要があるといえます。
注1:家計が抱える金融機関などからの借金。
住宅や自動車など高額なモノの購入のためのローンや
クレジットカードを使った借り入れなどを含む。