政府が推奨する「週休3日制」。パナソニックホールディングスや日立製作所なども導入を表明するなど盛り上がりを見せています。 休息の増加は働く側に利点は大きいのですが、経営上のプラスはあるのだろうか?という議論がなされています。 今回は、事例をふまえて、働く側と経営側双方がウィンウィンになれる可能性について取り上げます。 週休3日には主に3つのパターンがあります。まず1日の所定労働時間はそのままに休日を1日増やすもの。 総労働時間が減るので給与も減額するこのパターンは、パナソニックホールディングスが導入検討中です。 次に休みを増やす代わりに出勤日の就労時間を延ばすもの。 所定労働時間は増減しないので給与は減額となりません。 日立製作所が検討中なのがこのパターンです。 そして3つ目が1日の所定労働時間はそのままに休日を増やし、給与も据え置くパターンです。 ファッション通販ZOZOTOWNを運営する株式会社ZOZOでは、 2021年4月にホスピタリティ本部を対象に選択的週休3日制を導入しました。 この部署は、メールやチャットなどによる顧客からの問い合わせや苦情に対応するため、 新型コロナウイルスの感染拡大期も原則出勤。 ほかの部署はテレワークが進んだ中で、ホスピタリティ本部も柔軟に働く方法はないかと模索し、 週休3日制の導入を決めたそうです。 ZOZOの所定労働は基本1日8時間。 週休3日制を選ぶと、休日1日分の所定労働8時間を4日に分配し、出勤日は1日10時間働くことになります。 出勤日は長く働かなくてはいけないが、給与が減らない仕組みの方が社員は選びやすいと考えた結果、 取り入れた制度です。 従来通り週休2日で働くのも自由で、半年ごとに自分で決めることができ、所属する正社員約100人中、 常時3割超が週休3日で働いており、この1年で半数が1度は経験したそう。 初の週休3日の準備に会社は半年を費やしたそうで、まず利用意向を調査。 おおよその利用者を把握して、どう勤務体制を組めばよいか検証し、仕事のやり方は職場単位で見直しました。 情報共有にメールやチャット活用を推奨。ただ休日に仕事のメールに追われては意味がないので、 休日中は確認も返信も不要としました。 各社員も休むために業務の無駄を洗い出し、 自分が不在でも仕事が滞らないように詳細な業務マニュアルを作成したり、 仕事の進捗状況を早めに上司へ報告・相談するように行動を変化させるなどしました。 もちろん課題もあり、最も大きいのが職場内のコミュニケーションで、 平日に休む社員がいると、全員がそろう会議の時間設定が難しくなります。 また、出勤日に2時間多く働くのは慣れないと体に負担がかかるというデメリットも。 ただ、一人ひとりが業務を改善した結果、 週休3日を選んだ社員の残業時間が全体で63%減少という結果が。 業務量は減らしていないので、実質職場の生産性は上がり、 「休むために出勤日の仕事に集中する」という良い循環が生まれました。 マイナビでは2021年12月に正社員男女800人を対象に「週休3日制の意識調査」を実施。 週休3日制の主な3パターンのうち、 勤務日数の減少に応じて収入も減る仕組みは78.5%が「利用したくない」と回答したとのこと。 これは、みずほフィナンシャルグループやヤフーなど多くが採用する方法で、 通常出勤日が5分の4に減るのに合わせ、給与も80%に減額されるので、 休日が増えるメリットより、減収の不安が大きいようです。 ZOZOや日立製作所のように1日の所定労働時間を延ばして収入を据え置くパターンも「利用したくない」が53.9%。 勤務日数・時間が減っても収入が変わらないパターンは「利用したい」が77.9%と多数を占めていますが、 所定労働時間を減らしながら給与は据え置く週休3日制は大幅な生産性向上が欠かせず、導入のハードルは最も高くなります。 とはいえ事例はあり、精米機メーカーのサタケ(広島県東広島市)は、 2017年から夏限定で週休3日制を続けています。 「暑い夏は休みたい」という役員の発案がきっかけで、 電話や雑談を一切禁じる業務集中タイムを午後に設けるなど生産性向上に取り組んだ成果だそうです。 週休2日制は1970年前後から大手企業が採用し始めました。 当初は給与を維持したまま休日を週2日制にするなど不可能だとの見方が優勢でしたが、 今では当たり前の制度となりました。 これは会社と社員が生産性向上に真剣に取り組み、手に入れた結果であり、 勤務日数・時間が減っても収入が変わらない週休3日制が常識と未来がくるのかもしれません。