長年慣れ親しんだ家を手放したり、相続後に備えたりする 「住まいの終活」を首都圏の自治体が後押ししています。 空き家は近隣住民とのトラブルの原因となり、放火などの 危険性も高まるため、自治体は地域の安全を守るためにも 空き家の発生を防ぐ対策に力を入れています。 埼玉県越谷市が作成した「住まいの終活ノート」は、 高齢者らが元気なうちにできる家の相続準備の方法を まとめています。 住宅を所有し続けたいのか、売却して資産を現金化することで 相続や分配を行いやすくしたいのかなど、現時点の考え方を 整理するきっかけにしてもらうことを目的にしています。 例えば、終活ノートには家系図を書き込む欄があります。 相続人にあたる人は誰なのか確認するためです。 そこで初めて「相続人がどこに住んでいるのか、連絡先が わからない」と首をかしげる高齢者もいる。 「相続などに必要な基本的な情報を確認していくなかで、 課題に気づくことも多い」(市建築住宅課)そうだ。 ほかにも、不動産の登記情報を書き込める項目も用意。 市では、遺言書の作成や家族信託など具体的な相続対策も 紹介しています。 総務省の住宅・土地統計調査によると、2018年時点で 1都3県の空き家数は約200万戸。 このうち、賃貸用などではなく、住人が高齢者施設に 入居したり、住み替えたりした「その他の住宅」は約60万戸で、 増加傾向にあります。 こうした空き家は流通市場に出回らず放置されがちで、 将来、所有者がわからなくなれば、対応がさらに難しくなる 可能性が。 東京都墨田区では相続準備や荷物整理に関するセミナーを 開催し40~60歳代の子ども世代が参加。 家の基本情報などを書き込めるノートを配布したほか、 不用品を処分するコツやフリマアプリ「メルカリ」での 出品方法なども伝授しました。 家を手放す際に懸念材料となるのは、土地や建物を処分 した場合の収支ですが、解体費用を土地の売却で補えると 分かれば空き家を手放す動機づけになります。 そこで、神奈川県横浜市では家屋を解体するための資金計画 を立てやすくするため、解体費用と土地売却価格の概算額を 同時に自動で算出するサービスを始めました。 解体工事の一括見積もりサービスを手掛ける株式会社クラッソーネ と連携し「横浜市版 すまいの終活ナビ」のサイトで無料で 利用が可能。 https://www.crassone.jp/simulator/navi/kanagawa/yokohamashi 土地建物の面積や接する道路幅などの条件を入力すると、 AI(人工知能)が費用を算出。 結果画面では市の補助金制度なども案内し、解体の検討を 後押しします。 千葉県栄町では「空き家バンク」を通じて住宅の売買や 賃貸を促しています。 所有者の新規登録時に奨励金として2万円を支給することで 登録を働きかけ、物件をリフォームする場合は20万円を上限に 工事費用の5分の1を補助し、経済的な負担を軽減しています。 住宅販売のポラスグループでは、家とのお別れ会 「棟下式(むねおろしき)」という取り組みを行っています。 お客様が建てた家とのお別れを想い、家を家族とともに丁重に お送りする儀式です。 この儀式は、お客様の想い出を大切にするとともに、 住宅建設において環境に配慮した取り組みを推進することを 目的としています。 https://www.muneoroshiki.com/ 深刻化する空き家問題を仕組みで解決して行こうという 取り組みは重要ですが、心情的に思い出のある家を手放すことに 踏み切れない方も多くいらっしゃいます。 引き渡しをする側も受け継ぐ側も、心地よい住まいとの別れを スムーズに行えるように取り組んでいきたいですね。