新型コロナウイルスの影響により、 不動産業界では、「オンライン内見可」の物件が増加し、 その結果、「VR内見」を導入する会社も増えてきました。 「VR内見」とは、バーチャル・リアリティ(VR)の技術を用いて 物件をパノラマ撮影し、現実にいるかのように仮想体験する方法です。 このようなVRコンテンツは一度の撮影で簡単に作成でき、 パソコンやスマートフォンのホームページや、チラシのQRコード からアクセス可能で、 お客様はマウスや指先の操作で間取り図を移動し、 お部屋の景色や設備の状況を見ることができます。 VR内見を導入することで、現地へ行けないお客様や、 遠方から物件を探しているお客様への対応が可能になったり、 現地での内見の数を減らすことで、お客様と不動産会社の双方が 時間と交通費を節約できるなどのメリットも生まれます。 さらに、空室対策としてもVR内見は有効で、 入居者がまだ退去しておらず内見ができない場合でも、 物件を仮想空間に再現することでいつでも内見が可能となります。 この流れを更に加速させるかもしれないニュースが入ってきました。 2023年6月5日(現地時間)に開幕したWWDC23のなかで、 アップルが初のVR/ARヘッドマウントディスプレイ 「Vision Pro」を発表しました。 これは、頭部に取り付けるデバイスで、 仮想現実(VR)や拡張現実(AR)体験を提供します。 https://www.apple.com/apple-vision-pro/ IT大手のなかで、アップルはVR/AR製品に関しては 後発組にあたりますが、そのアップルが選んだ製品の戦略は、 価格3499ドル(約48万8000円)という、高価格なハイエンド製品 というものです。 発売はまずアメリカ市場からで、2024年早々を予定しています。 Vision Proの特徴は、その独特なデザインで、 スキーのゴーグルを思わせる形で、顔の表情が透けて見えるような 設計になっています。 これは、デバイスを装着すると一般的に表情がわからなくなる ことからくる、「自分だけの空間」に閉じこもる印象を打破する ための工夫といえ、 人と一緒にいる時でも使うことを想定したデザインには、 強いメッセージ性が込められていると考えられています。 Vision Proは、仕事で使用することも、 Macと接続してバーチャルディスプレイとして使用することも、 家族や子どもとの立体視動画を撮影することも可能です。 特に他者のいる空間で使用する際には「表情」が見えることが重要 だとアップルは考えています。 この製品がVR業界に与える影響は計り知れません。 アップルは常にユーザー体験を重視し、 その分野にイノベーションを起こし続けてきた企業です。 そんなアップルがVR業界に参入することで、 VR内見を利用した不動産紹介の一層の普及を促す可能性があります。 その結果、より多くの人々がVRを通じて物件を確認し、 新たなビジネスチャンスを創出するかもしれません。 高価格なVision Proは、一般的な不動産業者にとっては 導入のハードルが高いですが、それでも、アップルの参入により VRの認知度が上がれば、間違いなくその波は不動産業界にも 押し寄せることでしょう。 また、既存の低価格なVR製品を持つ企業もまた、 新たな価値提案を模索する必要が出てきますし、 ソフトウェア業界にも影響を及ぼすことが予想されます。 アップルがVR製品を投入することで、 新たなアプリケーションの開発や、 既存のアプリケーションのVR対応が加速する可能性があります。 特に、不動産業界のようにVRがビジネスの進行を大きく支える業界では、 より具体的なVRアプリケーションのニーズが高まると思われます。 VR技術の進化と普及は、 社会全体のデジタルトランスフォーメーションを加速し、 人々は、現実と仮想の境界がますます曖昧になりつつあり、 新たな技術の波に乗って進化を続けるでしょう。 アップルの参入がVR業界に新たな風を吹き込み、 大きな変化をもたらす可能性と、 消費者の反応や市場の動向を注視していきたいですね。