コロナ禍などの影響による少子化の進行で、 2000年に約119万人だった出生数が21年には過去最小の81万人まで 減少しており政府の推計よりも速いスピードで人口減少が進行するなか、 大都市部ではタワーマンションの建設が相次ぎ、郊外部や地方都市の 農地エリアでは宅地開発が続いています。 都道府県の約4分の1にあたる12県で、世帯に対して住宅が2割以上も 余っており、過剰率は山梨が27%と最も高く、四国は全4県が20%以上。 共通するのは住宅需要を超える供給で、12県中の11県で地価が下落しており 地元経済への影響が懸念されています。 総務省の住宅・土地統計調査で、 総世帯数に対して総住宅数がどれだけ多いかを「住宅の過剰率」として 都道府県別に調査。 最新の2018年では山梨(27%)が最も高く、和歌山(25%)、長野(24%) が続き、総住宅数は全都道府県で総世帯数を上回っています。 家余りは地価の動向に影響しており、 2022年の基準地価(7月1日時点)は住宅地の全国平均が前年比0.1%上昇と、 1991年以来、31年ぶりにプラスに転じたものの、 愛媛は1.5%の下落、鹿児島1.3%、山梨1.2%、和歌山1.1%の下落など、 住宅の過剰率が高い地域の多くは前年比マイナスで推移しています。 日本は人口減少のなかでも単身世帯の増加などで世帯数は増えてきましたが、 国立社会保障・人口問題研究所は23年に世帯数がピークを迎え、 減少に転じると予測。 特に住宅の過剰率が高い地域では対策は急務だといわれています。 和歌山や高知は高度成長期の人口流入を期待して住宅を増やした結果、 1970年代にはすでに家余りが目立っていたところ、 他県に先駆けて急速に人口減が進んだため、過剰率の上昇に歯止めが かかっていない状況です。 また、都心から30~40㎞圏内の横浜市や千葉市郊外の街には、 65歳以上の高齢者のみが住んでいる戸建て空き家予備軍の絶対数が 極めて大量にあります。 こうしたエリアは、高度経済成長期に計画的に整備してきた郊外住宅地が多く、 同じような時期に同じような世代が戸建て住宅を購入し、世代交代が進まずに 高齢化が進行しています。 こうしたなか、データに基づいて住宅の需要や解体の費用を分析して、 空き家の所有者らに売却や賃貸、解体といった「住宅リストラ」を 勧める自治体もあります。 2018年時点で過剰率が最も低い埼玉県にある人口8000人弱の横瀬町は 将来の人口減少も推計したうえで空き家対策を急いでいます。 空き家の所有者と利用を希望する人を結びつける「空き家バンク」の拡充に加え 2021年には民間の企業と連携し、空き家の資産価値を無料で調査する プロジェクトを実施。 所有者へ空き家活用の働きかけを強化し、売却や賃貸に至る実績も出ています。 「相続した家に思い出がある」「遺品整理が大変」 「先祖代々の土地だから手放したくない」といった理由から、 「取りあえずそのままにしておこう」とする傾向が極めて強く、 また相続関係が複雑で空き家となっている場合も多いなどさまざまな理由で 処分に踏み切れない所有者と接点を保ち、相談に即応する体制も整えました。 愛知県で空き家率が最も高い南知多町は2021年、 民間企業が開発した空き家の解体費のシミュレーターを採用し、 空き家の所有者らが無料で使えるようにしました。 町が公費で解体しても割高な例が多いこともあり、所有者からの解体費用 の回収が難航しかねませんが、シミュレーターで業者間の競争を促し、 解体費用をより安く抑えられる可能性を所有者らに提示しています。 京都市は2026年度以降に、 空き家や別荘などの所有者が納税しなければならない 「非居住住宅利活用促進税」を導入すると発表。 想定されている課税対象は約1.7万件といわれています。 利用されていない空き家を減らすことが目的とされています。 静岡県熱海市でリゾートマンションなどに「別荘等所有税」が導入された例が ありますが、都市部で空き家も含めた幅広い住宅の所有者を対象として定められた 税金制度は、全国初だといわれています。 高度経済成長期から続いてきた住宅政策や都市計画の在り方を根本的に 見直すべき時期にきているのは間違いなく、 われわれ不動産事業者としては、このような問題しっかりと認識し、 都市計画や住宅政策の動向にも注目してくことで お客様の相続や売却の相談に真摯に向き合いサポートしていきたいですね。