以前、本メルマガでも取り上げましたが、NTTは2022年7月に
「リモートスタンダード制度」を導入。
これは、テレワークが可能な社員について、
従来の「勤務場所から片道2時間以内の居住」の条件をなくし、
出社時の交通費の上限も撤廃。
勤務場所は自宅やサテライトオフィスなどで、
出社が必要になった場合の交通費の支給上限は設けず、飛行機も利用可能、
社員は国内のどこでも自由に居住して勤務できるという制度です。
導入後は、遠隔地に異動になっても必ずしも転居する必要がなくなり
これまでに800人以上が単身赴任を解消したそうです。
全国に拠点のあるNTTは転勤が多く、都市部だけでも単身赴任者が
約1,500人おり、会社都合で家族と別居を強いられる社員は、
働く意欲が低下したり離職したりする例もあったとのこと。
NTTでは、 「ワーク・イン・ライフ 〜生活の充実なくして、仕事の充実はない〜」
をコンセプトとし、テレワークを活用して住む場所を働き手の自由に
委ねることは、従業員の生活と仕事の質の向上に大きく影響するため
主要グループ会社の半数にあたる3万人を対象としていた
「リモートスタンダード制度」をグループ19万人に順次拡大していく
としています。
制度を使っても給与体系は変わらず、人事評価に影響することもありません。
NTTでは2023年4月に社員を18の専門分野に分ける人事制度に移行し、
昇格・昇給の基準に専門性を加えて明確にすることで、
リモート中心となっても客観的に評価できるとみています。
制度を利用した社員からは
「家族に負担をかけずに新たなキャリアに挑戦できる」
「夫の都合で妻のキャリア形成を阻害せずにすむようになる」
といった意見や、
「妻の住む札幌市に転居し、スキーや旅行など週末が充実し、
仕事への活力も高まった。」
といった事例も。
もちろん課題もあり、遠隔地での就業は通常のテレワークより上司・同僚と
対面する頻度が下がるため、直接コミュニケーションをとる機会が減り、
特に若手の育成面で懸念があります。
「仕事の全体像が見えず、上司と気軽に相談できないテレワークには、
成長の実感がない」として、出社中心の部署への異動を申し出る
20代社員もいるため、NTTは各部署に対し週1回30分の雑談ミーティングや
部署ごとの出社日の統一を奨励するほか、
オンラインチャットや仮想オフィスなどのITツールの導入を進めており
NTTドコモは4月に入社する新入社員の不安を取り除くため、
管理職向けにテレワークと出社を柔軟に組み合わせるよう通達を出した
とのことです。
NTT以外にも、住む場所の自由化に踏み切る企業は増えていて、
2022年に実施した日本経済新聞の調査では主要813社の11%が
「遠隔地配属でもリモート勤務を認める制度」を導入済みとのこと。
ヤフーは2022年4月、全社員約8千人について住む場所の制限をなくし、
4%に当たる300人以上が遠隔地に移住しました。
制度導入後半年の移住先は5割が九州、3割が北海道。
住環境の改善でアイデアを生み出しやすくなったとの声もあります。
また、意思疎通を強めるため、社員同士の懇親会の費用を月5千円補助する
制度を導入し、社員の半数以上が利用しています。
2020年にテレワークによる遠隔地からの就業を制度化した富士通では、
約2,000人が同制度を利用。
ワーケーション誘致に熱心な大分県や和歌山県などの自治体と協定を締結し、
現地のサテライトオフィスの整備など社員の地方移住も後押し。
15人程度が移住をしました。
ディー・エヌ・エーでは、2022年6月に国内のどこでも居住できる制度を
導入したところ、エンジニア職の中途採用者の15%以上を首都圏以外に居住する
テレワーク就業者が占めるようになりました。
制度導入後、名古屋市など地方都市での採用説明会も始めたそうです。
人事の専門家は、
「幅広い働き方の選択肢を示せない企業は多様な人材を採れなくなる。
居住地不問の働き方も定着する可能性が高く、課題を検証し、
改善を続けることが必要」
と指摘しています。
人々の暮らしの価値観が急激に変化している昨今、
大都市への人口集中が改善されると、地方にとっては
様々なメリットが生まれますので、柔軟な発想で自社の強みを生かした
ビジネスを展開することが改めて大事だと感じました。